今回は、離婚を考えている奥様から、夫に連れ去られた子供の取り戻しについてのご相談です。
結論:子の監護者の指定と子の引渡の審判の申立、審判前の保全処分の申立によって子供を取り戻すことが可能です。
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1.ご相談者
30代の女性(主婦)
①夫は40代(会社員)
②婚姻期間は7年
③小学生の子供が1人
2.ご相談の内容
夫の暴言に嫌気がさして、離婚を決意して子供を連れて実家に帰りました。ところが、夫と離婚の話し合いをしている間に、夫が子供を連れ去ってしまいました。私は、何度も子供を返すように言っているのですが、夫は聞く耳を持たず、子供にはいつも夫の母がついていて、子供を返してくれません。
夫が連れ去った子供を取り戻すにはどうしたらよいでしょうか?
3.ご相談への回答
子供の住所地を管轄する家庭裁判所に監護権者の指定と子の引渡の審判の申立てをしたうえで、審判前の保全処分の申立てをします。
(1)子供を取り戻すにはどんな方法があるの?
子供を取り戻す方法として、①子の監護者の指定と子の引渡の審判の申立、審判前の保全処分の申立をする、②離婚訴訟等の附帯請求としての子の引渡請求、保全処分の申立をする(人事訴訟)、③人身保護法に基づいて子の引渡請求をする、④妨害排除に基づく子の引渡請求をする(民事訴訟)、⑤告訴等による逮捕等の刑事手続により子供を取り戻す方法があります。
これらの中で、一方の親の下で監護されていた子供が他方の親に連れ去られたような場合には、①の方法を採るのが一般的です。
以前は、子供を取り戻すために、人身保護法に基づく子の引渡請求(③)がなされていました。
ところが、最高裁判所が「拘束している親の監護が、他方の親の監護に比べて子の福祉に反することが明白である場合」でなければ人身保護請求は認められない(最高裁平成5年10月19日判決、同平成6年4月26日判決)としたため、現在では人身保護請求が厳格に解されています。
また、刑事手続(⑤)については、夫が別居中の妻が養育していた2歳の長男を、保育園から帰る途中に車で連れ去った事案で、最高裁判所が、妻とその両親に監護養育されて平穏に生活していた長男を連れ去った行為は未成年者略取罪にあたる(最高裁平成17年12月6日決定)としてからは、未成年者略取罪にあたるような場合には刑事手続を利用することはできるようになりました。ただ、逆に言うと、子供の年齢や監護の状況などに照らして、未成年者略取罪にあたるような違法性がなければ、刑事手続を利用することができません。
このようなことから、親同士の間で子供の取り戻しが問題になっている場合には、迅速に、確実に子供を取り戻すために、①の方法によるのが一般的になっています。
なお、子の引渡の調停を申し立てる場合は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てをします。
(2)子供の引渡はどんな基準で判断するの?
子供の引渡は、いずれが監護するのが適当かということなので、その判断基準は、親権者の指定のときの基準とほぼ同じで、父母の事情と、子供の事情を総合的に判断して、どちらが監護権者となるのが子供の利益になるかで判断します。
具体的には、父母の事情として、父母の監護の能力や意欲、経済状況、家庭環境、これまでの監護の状況等が考慮され、子供の事情として、子供の年齢、性別、兄弟姉妹の有無、発育状況、子供の意向、環境への適応状況等が考慮されます。
このような事情をもとに、監護の継続性を尊重すべきとする原則や、乳幼児については母親を優先させるべきとする原則、子供の意思を尊重すべきとする原則、兄弟姉妹は分離すべきでないとする原則、面会交流に寛容な親を優先すべきとする原則等を基準として、最終的にどちらが監護権者に相応しいかを判断して、子供を引き渡すかどうかを決めます。
(3)子供の引渡はどんな場合に認められるの?
子供の引渡は、父母の事情と、子供の事情を総合的に判断して決めるので、子供の引渡が認められるかどうかはケースバイケースです。
(ケース1)
①事案:面会交流後、長男(9歳)と二男(5歳)を車に乗せて連れ去った夫に対して、妻が監護者の指定と子供の引渡の審判を請求
②結論:子供の引渡を認めた
③ポイント:妻が継続的に安定して子供たちを養育していた、夫が違法に子供たちを連れ去った
④判例:裁判所は、これまで妻の下で継続的に養育されていたこと、1年以上実家で安定して養育されていたこと、現在の生活が違法な連れ去りによって作り出されていることを理由に、妻への子供の引渡を認めました(さいたま家裁川越支部平成24年4月26日審判)。
ここでは、監護の継続性が重視されています。
(ケース2)
①事案:転居先も教えずに、妻のいない間に長女(3歳)を連れて突然自宅を出て行った夫に対して、妻が監護者の指定と子供の引渡の審判を請求
②結論:子供の引渡を認めた
③ポイント:同居中、主に妻が子供を監護していた、夫に監護者としての適格性に問題がある
④判例:裁判所は、同居中の主たる監護者は妻であること、夫が妻の非難に耐えられず、子供を巻き込んで家を出た行為は、別居の際に子供の福祉を考慮したとは認められず、監護者の適格に疑問があること、近隣に聞こえるほどの怒鳴り声をたびたび子供に浴びせ、近隣住民から児童相談所に通告されていることを理由に、妻への子供の引渡を認めました(東京高裁平成29年2月21日決定)。
ここでは、父親の監護者としての不適格性が重視されています。
(4)審判前の保全処分って何?
審判前の保全処分は、審判による子供の引渡の実現を保全するためになされる、強制執行が可能になるまでの間の暫定的な処分です。
子の引渡の審判は、即時抗告されると確定しないので、子供の引渡が認められても確定するまで子供の引渡ができません。
これに対して、審判前の保全処分は、告知によって効力が発生し、即時抗告によって執行が停止されないので、子供の引渡が認められれば、即時抗告されても強制執行をすることができます。そのため、子の引渡の審判の申立をするときは、一緒に審判前の保全処分を申し立てます。
一般的に保全処分を命じるにあたっては、担保を立てさせるのが原則ですが、子の引渡の場合には、担保を立てさせないことが多いようです。
保全処分の審判に不服がある場合は、審判の告知を受けてから2週間以内に即時抗告をする必要があります。
なお、子の引渡の保全処分が認められたことに不服がある場合には、即時抗告によって執行は停止されないので、執行を停止させるために、即時抗告と一緒に執行停止の申立をする必要があります。
(5)どんな場合に保全処分が認められるの?
保全処分が認められるためには、①本案の審判で子供の引渡が認められる蓋然性があること、②保全の必要性があることが必要です。これらの要件を充たせば、子の引渡の保全処分が認められます。
(ケース1)
①事案:離婚調停の不成立後、夫が監護している長男(3歳)を保育園から無断で連れ出した妻に対して、夫が子の引渡の保全処分を申し立て
②結論:子供の引渡を認めた
③ポイント:妻が一方的に子供を連れ去った、夫が必要な養育監護をしていた
④判例:裁判所は、妻が子供を一方的に連れ去っていること、夫が速やかに子供の引渡を求める保全処分を申し立てたこと、夫の監護の下に戻しても子供の健康が著しく損なわれたり、必要な養育監護がなされなかったりするおそれがないことを理由として、夫への子供の引渡を認めました(東京高裁平成20年12月18日決定)。
逆に、これらの要件が充たされないと、保全処分は認められません。
(ケース2)
①事案:妻がいない間に長男(9歳)と二男(7歳)を連れて家を出た夫に対して、妻が子の引渡の保全処分を申し立て
②結論:子供の引渡を認めなかった
③ポイント:夫が妻の父親と面談して子供を連れて行った、現在の生育環境が劣悪とはいえない
④判例:裁判所は、夫は、妻の父親との面談を経て移動したもので、子供たちを強制的に奪取したとはいえないこと、現在の子供たちの生育環境は劣悪とは認められないこと、従前の子供たちの監護の状況に妻と夫とで主従の差がないこと、本案審判の内容いかんによって子供たちの成育環境に多大な影響を与えるおそれが高いことを理由として、妻への子供の引渡を認めませんでした(東京高裁平成28年6月10日決定)。
(6)相手が子供を引き渡さないときはどうすればいいの?
子供の引渡が認められたのに、相手が子供を引き渡さない場合、地方裁判所に強制執行の申立をします。
強制執行には、直接強制と間接強制があります。
直接強制は、執行官が子供のいる自宅に行って直接子供を引き渡す方法です。
間接強制は、子供を引き渡さない場合に、一定の金銭の支払を命じることによって間接的に子供の引渡を強制する方法です。
子供の引渡を求める親としては、当然直接強制を求めることになりますが、現時点では、直接強制は、乳幼児や小学生低学年など、子供に意思能力がないと判断されるような場合にしかできないとされています。
また、直接強制とはいっても、執行官は、子供に対する影響を考慮して、できるだけ穏便に子供を引き渡すよう相手の親を説得しますし、子供が拒否していたり、泣いて親にしがみついているような場合にまで無理矢理連れて行くことはできません。そのため、結果として執行ができず、執行不能となることも多く、直接強制が成功することは少ないといわれています。
(ケース)
①事案:面会交流後、長男(9歳)と二男(5歳)を車に乗せて連れ去った夫に対して、妻が監護者の指定と子供の引渡の審判を請求(先程のケース1)
②結論:強制執行不能
③ポイント:長男が父親の下にいたいと言った
④判例:審判前の保全処分でも、同様の結論が出され、強制執行が行われましたが、長男が父親の下にいたいと言ったことから、強制執行が不能となっています(東京高裁平成24年6月6日決定参照)。
なお、保全処分に基づいて強制執行する場合には、債権者に保全命令が送達された日から2週間以内に着手する必要があるので、注意が必要です。
4.ご相談者へのアドバイス
ご相談者の場合、専業主婦ということなので、これまで奥様が主に子供の監護を行ってきたものと思われます。その後も、継続して子供を監護していることからすると、監護の継続性が認められます。
離婚原因は子の引渡に直ちに影響しないと言っても、すぐに怒鳴って暴言を吐くというのでは、子供の成長にとって好ましいものとは言えないでしょう。
また、違法に連れ去っていることを考えると、子供の引渡が認められる可能性は高いと言えます。
子供の住所地を管轄する家庭裁判所に監護権者の指定と子の引渡の審判の申立てをしたうえで、審判前の保全処分の申立てをするとよいでしょう。
5.今回のポイント
一方の親の下で監護されていた子供が他方の親に連れ去られたような場合、子供を取り戻すためには、子の監護者の指定と子の引渡の審判の申立、審判前の保全処分の申立をするのが一般的です。
子供の引渡は、父母の事情と、子供の事情を総合的に判断して、どちらが監護権者となるのが子供の利益になるかで判断します。
具体的には、父母の事情として、父母の監護の能力や意欲、経済状況、家庭環境、これまでの監護の状況等が考慮され、子供の事情として、子供の年齢、性別、兄弟姉妹の有無、発育状況、子供の意向、環境への適応状況等が考慮されます。
その上で、監護の継続性を尊重すべきとする原則や、乳幼児については母親を優先させるべきとする原則、子供の意思を尊重すべきとする原則などを踏まえて、子供を引き渡すかどうかを決めます。
審判前の保全処分は、審判による子供の引渡の実現を保全するためになされる、強制執行が可能になるまでの間の暫定的な処分で、即時抗告されても強制執行をすることができます。
保全処分が認められるためには、①本案の審判で子供の引渡が認められる蓋然性があること、②保全の必要性があることが必要です。
相手が子供を引き渡さない場合、地方裁判所に直接強制の強制執行の申立をします。
直接強制は、乳幼児や小学生低学年など、子供に意思能力がないと判断されるような場合にしかできないとされています。
また、直接強制とはいっても、子供への影響を考慮するので、結果として執行ができず、執行不能となることも多く、直接強制が成功することは少ないといわれています。
保全処分に基づいて強制執行する場合には、債権者に保全命令が送達された日から2週間以内に着手する必要があります。
6.一人では解決できない方、自分でやったけれど解決できなかった方へ
ブログを読んだけれど一人では解決できそうもない、ブログを読んで自分でやってみたけれど解決できなかったという方は、是非、当弁護士にご相談ください。
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7.弁護士費用(税別)
① 子の引渡審判事件(さらに10%OFF)
着手金 30万円
報酬金 30万円
② 離婚交渉・調停事件
着手金 30万円(さらに10%OFF)
報酬金 30万円(さらに10%OFF)+慰謝料・財産分与で得た金額の報酬額(③)
※1 婚姻費用・養育費を請求する場合の着手金は、上記の着手金に含まれます。
③ 離婚訴訟事件
着手金 40万円(さらに10%OFF)
報酬金 40万円(さらに10%OFF)+慰謝料・財産分与で得た金額の報酬額(③)
※1 離婚交渉・調停事件に引き続き離婚訴訟事件を依頼する場合の着手金は10万円(さらに10%OFF)となります。
④ 慰謝料・財産分与で得た金額の報酬額(さらに10%OFF)
300万円以下の場合 16%
300万円を超えて3000万円までの場合 10%+18万円
3000万円を超えて3億円までの場合 6%+138万円
⑤ 婚姻費用・養育費で得た報酬金(さらに10%OFF)
1か月の婚姻費用・養育費の2年分を基準として、③で算定した金額
⑥ DVによる保護命令の着手金・報酬金(さらに10%OFF)
着手金 15万円
報酬金 0円
⑦ 着手金以外に日当は発生しません。
その他に、印紙、郵券、交通費等の実費が発生します。