お父様を亡くされたご長女から、相続放棄の期間を過ぎた後の相続放棄についてのご相談です。
1.ご相談者
50代の女性
①被相続人
70代の父
②相続人
ご相談者の他に長男がいる
③相続財産
現金、預金、不動産(自宅)
2.ご相談の内容
1年前に父が亡くなったのですが、最近になって突然銀行から、父が兄の借金のために連帯保証人になっているので借金を払って欲しいという通知が来ました。これまで父や兄から、父が兄の借金の連帯保証人をしていたという話を聞いたこともありませんし、そのような借金を払える余裕もありません。
相続放棄をするには、父が亡くなってから3か月以内に手続をしなければいけないと聞きましたが、もう相続放棄をすることはできないのでしょうか?
3.ご相談への回答
相続開始後3か月を経過したあとでも、例外的に相続放棄が認められる場合があります。
(1)相続放棄の期間は?
相続放棄は、「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」から3か月以内にする必要があります(民法915条)。
「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」とは、相続が開始したことと、自分が相続人になったことを知ったときとされています。
(2)被相続人の死亡を知って3か月過ぎたら、相続放棄できないの?
被相続人が死亡して自分が相続人になったことを知ったときから3か月を過ぎた後でも、例外的に相続放棄が認められる場合があります。
例えば、父の死後約1年が経過した後に子供が相続放棄をした事案で、最高裁は、被相続人(父)と離婚した母と一緒に生活していて、父とは全く音信不通の子供が、父からは資産や負債について知らされず、訴訟をされていることも知らなかったことを理由として、相続放棄を適法と判断しました(最高裁昭和59年4月27日判決)。
また、父の死後、約6年後に子供が相続放棄をした事案で、福岡高裁は、子供たちは父が不動産を所有していたことは知っていたが、父の事業を継続するため母が遺産を相続し、また、結婚や大学進学によって実家を離れて生活し、父の事業に関与したこともなく、父の事業ではない債務の連帯保証債務の存在を知らなかったことから、相続財産が全く存在せず、かつ、相続債務がないと信じたことはことは相当な理由があるとして、相続放棄を認めました(福岡高裁平成27年2月16日判決)。
このように、離婚や親子の生活状況等によっては、相続財産がなく、かつ、相続債務がないと信じることに相当な理由がある場合には、被相続人の死亡を知って3か月が経過した後も相続放棄ができる可能性があります。
4.ご相談者へのアドバイス
ご相談者の場合、お父様が連帯保証人になっていることを知らなかったということですが、お父様の相続財産として不動産があるということなので、1年経過後に相続放棄ができるためには、自分が不動産を相続しない場合である必要があります。また、お父様がお兄様の連帯保証人になっていることを知らなかったと信じることについて相当な理由が必要になります。
ご相談者の場合にも、そのような事情があれば、相続放棄が認められる可能性があります。
5.今回のポイント
相続放棄の期間は、相続が開始し、自分が相続人になったことを知ったときから3か月以内です。
3か月を経過した後であっても、相続財産がなく、かつ、相続債務が存在しないと信じたことに相当な理由がある場合には、相続放棄が認められる可能性があります。
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弁護士費用(税別)
① 単純な相続放棄の場合
着手金 相続人1人につき、3万円
報酬金 0円
② 審判事件
着手金 20万円
報酬金 相続放棄によって免れた金額の報酬額(③)
③ 相続放棄によって免れた金額の報酬額
300万円以下の場合 16%
300万円を超えて3000万円までの場合 10%+18万円
3000万円を超えて3億円までの場合 6%+138万円
④ 着手金以外に日当は発生しません。
その他に、印紙、郵券、交通費等の実費が発生します。
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