ご主人を亡くされた奥様から、借金を相続しない方法についてのご相談です。
1.ご相談者
40代の女性
①被相続人
40代の夫
②相続人
ご相談者(奥様)の他、子供がいる
③相続財産
マンション、F現金、預金
2.ご相談の内容
夫が亡くなりました。夫は、個人で事業をしていたので、会社が銀行からした借金について連帯保証していました。自宅のマンションにも抵当権がついています。夫が亡くなり、事業を継続することができないので、会社をやめるしかありませんが、1000万円以上の借金が残っています。
私も子供もこのような借金を払えませんが、借金を相続しないようにすることはできるでしょうか?
3.ご相談への回答
相続放棄をして借金を相続しないことができます。
(1)相続を放棄することはできるの?
資産と借金を比べて借金の方が多い場合、相続してもマイナスになるだけなので、相続するメリットはありません。そのような場合、相続を放棄をして借金を相続しないことができます。
これを「相続放棄」と言います(民法939条)。
ただ、相続放棄は、あくまで資産も借金も全て放棄するということなので、借金だけ相続しないということはできません。
(2)相続放棄はいつまでにするの?
相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にする必要があります(民法915条)。
相続開始があったことを知ったときとは、通常、被相続人の死亡を知ったときです。
したがって、被相続人の死亡を知ったときから3か月以内に相続放棄をする必要があります。
ただ、死亡したことを知っていても、借金の存在を知らなかったような場合には、それを知ったときから3か月以内に相続放棄をすれば、借金を相続しないことができます。
(3)3か月で相続財産の調査ができない場合はどうしたらいいの?
相続放棄をした方がよいのかどうかは、相続財産を調査してみなければ分かりません。
相続財産を把握している場合や、相続財産がそれほど多くない場合には、調査にそれほど時間はかかりませんが、そうでない場合には、3か月では調査できない場合もありえます。
そのような場合には、家庭裁判所に請求することによって期間を延長することができます。
(4)相続放棄はどこにするの?
相続放棄は、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所にします(民法938条)。
(5)資産と借金のどちらが多いか分からないときはどうしたらいいの?
資産と借金のどちらが多いか分からないという場合に、一度相続放棄をしてしまうと、後で撤回することができません。
そのような場合には、相続財産の限度で借金を負うことによって、責任を免れることができます。
これを「限定承認」と言います。
限定承認をすれば、最終的に借金が相続財産を上回っても、それ以上借金を払う必要はないので、安心できます。
ただ、限定承認をするには、相続放棄と違って、相続人全員でしなければいけないので(民法923条)、1人でも同意しないと、限定承認をすることはできません。
限定承認の手続については、相続放棄と同じように、相続の開始を知ったときから3か月以内に、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所にしなければいけません。
4.ご相談者へのアドバイス
ご相談者の場合、自宅に抵当権がついていて、1000万円以上の借金があるということなので、おそらく借金の方が多いと思いますが、そのような場合には、相続放棄をすることによって借金を負わなくて済みます(その場合、当然のことながら、自宅を相続することはできません。)。
ただ、自宅に抵当権がついていても、自宅の価値が1000万円以上あるのであれば、相続放棄をする必要はないので、その点の調査が必要になります。
自宅や預金も含めた資産と、借金と比較しても、どちらが多いか分からないという場合には、限定承認をすることも検討してよいでしょう。
5.ご相談後の対応
ご相談者の場合、結局、自宅と預金を併せても借金を返済できなかったので、相続放棄をしました。
6.今回のポイント
資産と借金を比べて借金の方が多い場合には、相続放棄によって、借金を相続しないことができます。
相続放棄は、自分のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にする必要があります。
3か月で相続財産の調査ができない場合には、家庭裁判所に請求することによって期間を延長することができます。
相続放棄は、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所にします。
資産と借金のどちらが多いか分からないという場合には、、限定承認によって、相続財産の限度でしか責任を負わないとすることができます。
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弁護士費用(税別)
① 単純な相続放棄の場合
着手金 相続人1人につき、3万円
報酬金 0円
② 着手金以外に日当は発生しません。
その他に、印紙、郵券、交通費等の実費が発生します。
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