お母様を亡くされたご長男から、賃貸不動産の賃料の分け方についてのご相談です。
1.ご相談者
60代の男性
①被相続人
80代の母
②相続人
ご相談者(長男)と長女
③遺産
現金、預金、不動産
2.ご相談の内容
母が亡くなりました。現在、姉と遺産について話をしていますが、姉は、マンションをもらうと言っています。私としては、その分を現金でもらい、平等に分けるのであれば問題ないのですが、姉は、さらに相続開始後の賃料も自分がもらうと言っています。
母の死亡後の賃料は、マンションをもらう姉が取得するのでしょうか?
3.ご相談への回答
マンションを取得しない相続人も、相続分に応じて賃料を取得することができます。
(1)相続開始後の賃料は誰が取得するの?
相続開始後の賃料は、遺産とは別個の財産です。
したがって、誰がマンションを取得するかにかかわらず、相続開始から遺産分割が確定するまでの賃料は、それぞれの相続人が相続分に応じて取得することになります。
例えば、Aが死亡後に発生した賃料2億円をめぐって、Aの後妻(X)が前妻の子供(Y)に対して、不動産から生じた賃料は、相続開始にさかのぼって、不動産を取得した相続人が取得すると主張したのに対して、Yは、遺産分割が確定するまでは、法定相続分に従って各相続人が取得すると主張した事案がありました。
Xの主張によると、Xの取得する金額は1億9000万円になり、Yの主張によると、Xの取得する金額は1億円でした。
この点について、最高裁は、「遺産は、相続開始から遺産分割までの間は、共同相続人の共有に属するから、遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる賃料債権は、遺産とは別個の財産であって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得する。」としました(最高裁平成17年9月8日判決)。
したがって、相続開始から遺産分割によって不動産を取得する相続人が確定するまでの賃料は、相続分に応じてそれぞれの相続人が取得することになります。
(2)裁判しないといけないの?
相続開始後の賃料は、遺産ではありませんが、相続人間で合意できれば、家庭裁判所の遺産分割調停で分割することも可能です。第三者の家庭裁判所が関与することで、相続開始後の賃料の帰属についても解決できることも多く、訴訟をする前に、まずは遺産分割調停の中で話し合いをするのが一般的です。
ただ、相続人間で合意ができなければ、訴訟で解決するしかありません。
4.ご相談者へのアドバイス
お姉さんは「相続開始後の賃料を自分がもらう」と言っていますが、相続が開始してから遺産分割が確定するまでの間の賃料は、それぞれの相続人が相続分に応じて取得することになります。
したがって、あなたの場合にも、法定相続分に従って、賃料の2分の1を取得することができます。
5.ご相談後の対応
ご相談後、受任し、お姉様に内容証明を送りましたが、交渉ではまとまりませんでした。そこで、家庭裁判所に遺産分割調停の申立てをしました。
調停では、相続開始後の賃料の取り扱いについては、2分の1ずつ取得することで合意ができ、マンションについても姉が取得することに同意しました。
ただ、マンションをいくらと評価するで大きな差があり、なかなかマンションの評価額について合意できず、結局、鑑定によって評価額を決めることになりました。
最終的に、鑑定による評価額を基準として、遺産の総額の2分の1の金銭と、賃料の2分の1の支払を受けて、無事解決することができました。
6.今回のポイント
相続が開始してから遺産分割によって不動産を取得する相続人が確定するまでの賃料は、相続分に応じてそれぞれの相続人が取得することになります。
相続開始後の賃料は、相続人間で合意できれば、家庭裁判所の遺産分割調停で分割することも可能です。
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弁護士費用(税別)
① 遺産分割調停事件
着手金 20万円
報酬金 遺産分割で得た金額の報酬額(③)
③ 遺留分減殺請求訴訟・遺言無効確認請求訴訟等
着手金 25万円
報酬金 訴訟で得た金額の報酬額(③)
③ 遺産分割・訴訟で得た金額の報酬額
300万円以下の場合 16%
300万円を超えて3000万円までの場合 10%+18万円
3000万円を超えて3億円までの場合 6%+138万円
④ 着手金以外に日当は発生しません。
その他に、印紙、郵券、交通費等の実費が発生します。
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