離婚を考えている奥様から、財産分与における退職金の取り扱いについてのご相談です。
結論:既に支払われた退職金はもちろん、将来の退職金であっても、財産分与の対象となる可能性があります。
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1.ご相談者
50代の女性(主婦)
①夫は50代(会社員)
②婚姻期間は22年
③財産は預金、マンション
2.ご相談の内容
夫はろくに生活費を渡さず、私に隠れて数百万円の借金をしていたことがありました。そのときは夫の両親にも助けてもらい、借金をきれいにしました。
ところが、最近になって、また夫が借金をしていることが分かりました。これ以上夫と一緒にいても仕方ないので、離婚しようと思っています。夫は、あと数年で定年退職し、会社から退職金が払われますが、それまで一緒にいたくありません。
今離婚すると夫の退職金は財産分与でもらえないのでしょうか?
3.ご相談への回答
将来支払われる退職金は、当然には財産分与の対象にはなりません。
将来退職金が支払われることが確実といえるような場合に、財産分与の対象になります。
(1)退職金は財産分与の対象になるの?
財産分与は、夫婦が協力して形成した財産を清算する制度なので、夫婦の共有財産といえる限り、財産分与の対象になります。
退職金は、賃金の後払いの性質を有するとされているので、離婚の時点で退職金が既に支払われている場合には、退職金についても夫婦の協力によって形成されたものと考えられ、婚姻期間中の給料の支払と同様、財産分与の対象になります。
ただ、財産分与は、あくまで夫婦が協力して形成した財産を清算する制度なので、退職金も婚姻期間に相当する部分に限られます。
たとえば、学校を卒業して何年か働いた後で結婚したというような場合には、退職金自体は結婚する前の期間も含めて算定されていますが、財産分与にあたっては、結婚した後の期間しか対象にならないことになります。
(ケース)
①事案:協議離婚した妻が夫に財産分与として既に支払われた退職金1761万円の2分の1を請求
②結論:410万円
③ポイント:夫の勤務期間12年2カ月のうち、妻が同居していたのは5年8か月だった
④判例:裁判所は、夫の退職金は、夫が勤務した12年2か月を対象としたもので、妻が夫と同居してその維持形成に寄与したのは5年8か月であるから、同居期間だけを寄与期間として計算すべきであるとして、同居期間の退職金820万円の2分の1の410万円の支払を認めました(横浜家裁平成13年12月26日審判)。
(2)将来の退職金は財産分与の対象になるの?
将来退職金が支払われる場合であっても、まだ夫が退職していない場合には、退職金が支払われていないので、実際に分けることができません。
将来の退職金は、倒産など経済状況によっては支払われないこともありますし、解雇された場合に支払われないこともあります。また、定年前に自己都合で退職した場合にも退職金の額が変わってきます。
このように将来の退職金には、不確定な要素が多く、退職金の金額や支払自体を確定できないので、財産分与の対象としにくい面があります。
とはいえ、このまま特に問題なく勤務していれば退職金が払われることが確実な場合もあります。
そのため、将来の退職金については、将来退職金が支払われることが確実といえるような場合に、財産分与の対象になるとされています。
(ケース)
①事案:妻が協議離婚後、離婚時に34年間勤務していた元夫の将来の退職金の財産分与を請求
②結論:612万円の財産分与を認めた
③ポイント:元夫の勤務する会社の規模が大きかった
④判例:裁判所は、将来支給を受ける退職金であっても、その支給を受ける高度の蓋然性が認められるときには、財産分与の対象とすることができるとした上で、元夫の勤務する企業の規模等から、退職時に退職金の支給を受けることはほぼ確実であることを理由に、退職金が支給されたときに612万円を支払うことを認めました(東京高裁平成10年3月13日決定)。
(3)どんな場合に将来の退職金の財産分与が認められるの?
どのような場合に「将来退職金が支払われることが確実な場合」といえるかは、本人の事情や会社の事情もあり、なかなか難しいところがあります。
(ケース1)
①事案:妻が国家公務員の夫に将来の退職手当の財産分与を請求
②結論:550万円の財産分与を認めた
③ポイント:夫が国家公務員だった、定年まで8年だった、現在の退職手当額と定年時の退職手当額の差が大きいので妻に配慮した
④判例:裁判所は、夫は別居時まで23年勤続し、現在自己都合によって退職しても1632万円の退職手当を受給できること、婚姻して別居するまで妻の協力があったことは否定できないこと、定年まで8年あり、退職手当を受給できない場合もあること、定年退職時の退職手当額1160万円が現在の自己都合の退職手当額907万円と比べて差が大きいことなどを理由に、907万円のうち、550万円の財産分与を認めた上で、支払時期は将来退職手当を受給したときとしました(名古屋高裁平成12年12月20日判決)。
(ケース2)
①事案:妻が会社員の夫に将来の退職手当の財産分与を請求
②結論:188万円の財産分与を認めた
③ポイント:夫が6年後まで勤務する蓋然性がある、退職金の支給について不確定な要素がある
④判例:裁判所は、夫婦関係は悪化していたが、別居時までは妻としての役割を果たしていたこと、現在退職した場合でも699万円の退職金が受け取れること、夫が6年後の定年まで現在の会社に勤務して退職金を支給される蓋然性が認められること、退職金の支給について不確定な要素を全く否定できないことを理由に、定年時の退職金額を現在の金額に引き直した額の5割にあたる188万円の財産分与を認めました(東京地裁平成11年9月3日判決)。
4.ご相談者へのアドバイス
ご相談者の場合、婚姻期間が長いので、その間も夫が継続して会社に勤務していたとすると相当な退職金を受け取ることができるのでしょう。その場合、定年退職まであと数年ということなので、定年まで勤務する可能性は高いと言えます。
そうすると、将来退職金が支払われることが確実といえる可能性が高いので、将来の退職金も財産分与の対象とされる可能性は高いといえます。
その場合、財産分与の対象となる将来の退職金の金額をどのように決めるかについては、いろいろな考えがあるので、一概には言えません。
ただ、財産分与の割合については、特段の事情がない限り「2分の1ルール」に基づいて、2分の1の権利を持つといえます。
5.今回のポイント
離婚の時点で退職金が既に支払われている場合には、当然、財産分与の対象になります。
退職金も婚姻期間に相当する部分についてのみ財産分与の対象になります。
将来の退職金は、当然には財産分与の対象とはならず、将来退職金が支払われることが確実といえるような場合に財産分与の対象になります。
どのような場合に「将来退職金が支払われることが確実な場合」といえるかは、本人の事情や会社の事情に照らして判断されるのでケースバイケースですが、6~8年後に退職する場合には、財産分与の対象となる可能性があります。
6.一人では解決できない方、自分でやったけれど解決できなかった方へ
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7.弁護士費用(税別)
① 離婚交渉・調停事件
着手金 30万円(さらに10%OFF)
報酬金 30万円(さらに10%OFF)+慰謝料・財産分与で得た金額の報酬額(③)
※1 婚姻費用・養育費を請求する場合の着手金は、上記の着手金に含まれます。
② 離婚訴訟事件
着手金 40万円(さらに10%OFF)
報酬金 40万円(さらに10%OFF)+慰謝料・財産分与で得た金額の報酬額(③)
※1 離婚交渉・調停事件に引き続き離婚訴訟事件を依頼する場合の着手金は10万円(さらに10%OFF)となります。
③ 慰謝料・財産分与で得た金額の報酬額(さらに10%OFF)
300万円以下の場合 16%
300万円を超えて3000万円までの場合 10%+18万円
3000万円を超えて3億円までの場合 6%+138万円
④ 婚姻費用・養育費で得た報酬金(さらに10%OFF)
1か月の婚姻費用・養育費の2年分を基準として、③で算定した金額
⑤ DVによる保護命令の着手金・報酬金(さらに10%OFF)
着手金 15万円
報酬金 0円
⑥ 着手金以外に日当は発生しません。
その他に、印紙、郵券、交通費等の実費が発生します。