お父様を亡くされたご長女から、介護と寄与分についてのご相談です。
1.ご相談者
50代の女性
①被相続人
70代の父
②相続人
ご相談者(長女)と長男と母
③遺産
現金、預金、不動産
2.ご相談の内容
父が亡くなり、弟と相続の話をしています。父は7年前に脳梗塞で倒れて半身不随になり、食事を上手くすることができず、言語障害や失禁することもありました。私と母が食事や入浴など介護をしてきましたが、弟は全く介護に協力しませんでした。
父を介護した私は弟より多く相続することはできないのでしょうか?
3.ご相談への回答
相続人(長女)が被相続人(父)を療養看護することによって被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をした場合には、寄与分(きよぶん)として多く相続することができます。
(1)寄与分(きよぶん)って何?
寄与分とは、相続人が被相続人の事業に労務を提供したり、財産上の給付をしたり、療養看護をしたりして、被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与があった場合に、寄与に相当する額を取得することを言います(民法904条の2)。
(2)寄与分はどんな場合に認められるの?
寄与分が認められるためには、①相続人の寄与行為であること、②特別の寄与であること、③遺産が維持または増加したこと、④寄与行為と遺産の維持・増加に因果関係があることが必要です。
①については、原則として相続人の行為ですが、相続人でなくても、相続人の行為と同視できる場合には寄与分が認められることがあります。
②については、「特別」の寄与が必要で、通常期待される程度の貢献では寄与分は認められません。
(3)介護は寄与分と認められるの?
病気をした被相続人を介護した場合も寄与分が認められます。
ただ、寄与分が認められるためには「特別」の寄与が必要なので、単に病人に付き添っていたという程度では「特別」の寄与にあたりません。
例えば、Aによる被相続人の入院期間中の看護、死亡前半年間の介護は、本来家政婦などを雇って介護に当たらせるのが相当であり、それ以外の期間も入浴や食事や日常の介護が13年にわたって継続して行われたものであるから、同居の親族の扶養義務の範囲を超え、相続財産の維持に貢献したとして、200万円の寄与分を認めています(東京高裁平成22年9月13日判決)。
また、夫婦が他方を介護する場合は、子供が親を介護する場合より、互いに扶助する義務(民法752条)の程度が強いので、寄与分が認められる場合が狭くなります。
(4)寄与分が認められるとどうなるの?
寄与分が認められると、遺産から寄与分に相当する額を除いた財産を基準として法定相続分の割合で算定した相続分と寄与分を併せて相続することができます。
例えば、相続人が子供2人(A、B)で、相続が開始した時点での遺産が5000万円、Aの寄与分が1000万円とします。この場合、まず5000万円の遺産からAの寄与分1000万円を除き、残りの4000万円をAとBで2分の1ずつ分けます。最終的に、Aは3000万円、Bは2000万円を相続することになります。
4.ご相談者へのアドバイス
ご相談者の場合、半身不随になったお父様の食事や入浴などの介護を7年間してきたということで、おそらく対価も受け取っていないでしょうから、特別の寄与として寄与分が認められる可能性があります。
また、お母様についても、通常期待される程度を超えて貢献していると言える場合には、寄与分が認められる可能性があります。
弟と相談して寄与分が決められない場合には、家庭裁判所に遺産分割の審判の申立てと寄与分を定める処分の審判の申立てをしましょう。
5.今回のポイント
相続人が被相続人を療養看護して、被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与があった場合には、寄与分にを取得することができます。
寄与分が認められるためには、「特別」の寄与が必要です。単に病人に付き添っていたという程度では「特別」の寄与にあたりません。
寄与分が認められると、遺産から寄与分に相当する額を除いた財産を基準として法定相続分の割合で算定した相続分と寄与分を併せて相続することができます。
寄与分が決まらない場合には、家庭裁判所に遺産分割の審判の申立てと寄与分を定める処分の審判の申立てをしましょう。
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弁護士費用(税別)
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報酬金 訴訟で得た金額の報酬額(③)
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